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年金3割減は本当?いつから?8万円→5.6万円を公式の数字で確認

年金3割減は本当?8万円→5.6万円を公式の数字で確認(2024年財政検証)

年金を一律に3割減らすことが決まったわけではありません。厚生労働省の2024年財政検証にある「過去30年投影ケース」で、基礎年金の所得代替率が2024年度36.2%から2057年度25.5%へ約3割低下する見通しが示されたものです。

同じケースでも、物価で割り戻した基礎年金の実質額は約2割の低下で、日本年金機構が公表した2026年度の基礎年金は前年度比+1.9%、満額は月70,608円です。

「いつから減るのか」「8万円が5.6万円になるのか」を、公式の数字と底上げの規定から確認します。

とれちゃん

「年金3割減へ」って、もう決まった話なの?

とれくん

決定ではないよ。過去30年投影ケースで、基礎年金の所得代替率が2057年度に約3割下がるという見通しなんだ。

目次

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年金3割減は決まった?いつから減るの?

11/1(日)時点で、年金を3割減らす決定はない

2026/11/1(日)午後から、Xで「年金3割減へ 8万円→56000円」という投稿が広がりました。2026/10/31(土)には、2025年5月の報道をまとめ直したページも拡散していました。その報道は底上げ策が法案から外れていた時期のもので、その後の国会修正で底上げの規定が加わっています。

11/1(日)時点で、新しい減額の決定や発表はありません。そのため「いつから3割減るのか」という疑問には、「決まった開始時期はありません」というのが答えです。

話の元になっているのは、2024/7/3(水)に公表された財政検証です。財政検証は少なくとも5年ごとに行われるもので、経済の前提を置いて将来を計算した見通しです。減額を決める手続きではありません。

出典:厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html

「3割」の正体は過去30年投影ケースの所得代替率

「3割」が何の数字なのかは、次の表で確認できます。

項目 2024年度 2057年度(基礎年金の調整終了) 変化
基礎年金の所得代替率(夫婦2人分) 36.2% 25.5% 約3割低下
基礎年金の実質額(夫婦2人分・2024年度価格・月額) 13.4万円 10.7万円 約2割低下
モデル年金全体の所得代替率 61.2% 50.4% 10.8ポイント低下
モデル年金全体の実質額(月額) 22.6万円 21.1万円 約7%低下
現役男子の手取り(実質・月額) 37.0万円 41.8万円 増加

※厚労省「令和6(2024)年財政検証結果の概要」。新規に受け取り始める人のモデル。実質額は物価上昇率で2024年度に割り戻した額。

「約3割低下」に当たるのは1行目だけです。25.5÷36.2≒0.70という計算で、過去30年の経済が続くと仮定した慎重なケースの、基礎年金の所得代替率を指しています。厚生年金の報酬比例部分を含むモデル年金全体で見ると、同じケースの所得代替率は61.2%から50.4%への低下です。

また、2057年度は基礎年金の調整が終わる見込みの年度で、その年に一度に下がるという意味ではありません。同じケースの基礎年金の実質額(夫婦2人分)は、2029年度に13.1万円、2040年度に12.1万円、2057年度に10.7万円という見通しです。

出典:厚生労働省「令和6(2024)年財政検証結果の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/001270476.pdf

国立国会図書館の資料でも、このケースの2057年度は2024年度と比べて、基礎年金の所得代替率が約3割、実質額が約2割の低下と整理されています。

出典:国立国会図書館「2025年年金制度改革―基礎年金の給付水準底上げ案をめぐる論点―」 https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F14180480

経済ケースで見通しはどう違う?

過去30年投影ケースは、4つある経済ケースのうちの1つです。ケースごとの違いは次のとおりです。

経済ケース(実質賃金上昇率) 基礎年金の調整終了 基礎年金の所得代替率 全体の所得代替率
高成長実現(2.0%) 2039年度 31.9% 56.9%
成長型経済移行・継続(1.5%) 2037年度 32.6% 57.6%
過去30年投影(0.5%) 2057年度 25.5% 50.4%
1人当たりゼロ成長(0.1%) 機械的に調整を続けると国民年金の積立金が2059年度になくなる − 37%〜33%程度(積立金がなくなった後)

※2024年度は基礎36.2%・全体61.2%。

たとえば成長型経済移行・継続ケースでは、基礎年金の所得代替率は2037年度に32.6%です。夫婦2人分の基礎年金の実質額は、13.4万円から13.6万円(2037年度)という見通しになっています。

一方で、経済の前提が厳しいケースほど数字は低くなります。1人当たりゼロ成長ケースは、機械的に調整を続けた場合の計算です。どのケースになるかは、この記事では予想しません。

なお、次の財政検証までに所得代替率が50%を下回ると見込まれる場合は、給付水準調整の終了などの措置を講じ、給付と負担の在り方を検討する枠組みがあります。

出典:厚生労働省「令和6(2024)年財政検証結果の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/001270476.pdf

2026年度はむしろ+1.9%、満額は月70,608円

「もう減っているの?」という点は、2026年度の年金額で確認できます。2026年4月分(2026/6/15(月)支払分)から、基礎年金は+1.9%、厚生年金の報酬比例部分は+2.0%の引き上げです。

年金額(月額) 2025年度 2026年度
老齢基礎年金(満額) 69,308円 70,608円
厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額) 232,784円 237,279円

※日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」。昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額)は月70,408円。厚生年金は標準的なモデルの額で、全員の受給額ではありません。

ただし、物価変動率は+3.2%で、引き上げ幅はこれより小さくなっています。改定には名目手取り賃金変動率の+2.1%が使われ、マクロ経済スライドの調整が基礎年金で−0.2%、厚生年金で−0.1%かかりました。額面は増えていますが、物価の伸びを上回ったわけではありません。

出典:日本年金機構「令和8年4月分からの年金額等について」 https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/kojin/2026/202604/0401.html

出典:日本年金機構「年金額の改定(Q&A)」 https://www.nenkin.go.jp/section/faq/jukyu/seido/kyotsu/gakukaitei/201906031.html

とれちゃん

「8万円→56,000円」って、公式の年金額と同じ数字なの?

とれくん

「8万円」の公式な根拠は見当たらないよ。2026年度の老齢基礎年金の満額は月70,608円だよ。

「8万円→5.6万円」は本当?何の数字?

拡散している内容と公式の数字を比べる

拡散している内容と、公式の数字や事実を並べました。

拡散している内容 公式の数字・事実(11/1(日)時点)
年金3割減へ 決定ではない。2024年財政検証の4ケースのうち「過去30年投影」で、基礎年金の所得代替率が2057年度に約3割低下という見通し
8万円→56,000円 2026年度の老齢基礎年金(満額)は月70,608円。「8万円」の公式な根拠は見当たらない
すぐ減る 2026年度は基礎+1.9%・厚生+2.0%の引き上げ。マクロ経済スライドは名目額が前年度を下回らない措置あり
底上げは断念 2025/6/13(金)成立の改正法で底上げの規定を追加。実施は2029年の財政検証を踏まえて判断

「8万円」の根拠は見当たらず、満額の3割減でも約4.9万円

「8万円」という金額に、公式な根拠は見当たりませんでした。老齢基礎年金の満額は月70,608円です。

仮に満額の70,608円を単純に3割減らすと約49,426円で、56,000円にはなりません。そもそも、ここでいう「3割」は過去30年投影ケースにおける基礎年金の所得代替率の、2057年度までの低下です。手元の金額を一律に3割減らすという話ではないので、「8万円が5.6万円になる」と読み替えることはできません。

所得代替率と実質額は何が違う?

所得代替率は、現役男子の平均手取り収入に対する年金額の比率です。財政検証のモデルでは、次の式で計算します。

所得代替率=(夫婦2人の基礎年金+夫の厚生年金)÷現役男子の平均手取り収入額

つまり、年金額そのものではなく「現役世代の手取りと比べてどのくらいか」を示す割合です。分母の手取りが増えれば、年金額が同じでも比率は下がります。

実質額は、物価上昇率で2024年度の価格に割り戻した金額です。物価の変化をならして、2024年度の価値で比べた数字といえます。

過去30年投影ケースでは、現役男子の手取り(実質)が37.0万円から41.8万円に増える前提です。そのため、基礎年金の実質額(夫婦2人分)の低下は約2割でも、手取りとの比率である所得代替率は約3割の低下になります。「約3割」と「約2割」は、どちらも同じ見通しを別の物差しで表した数字です。

名目額は前年度を下回らない仕組みもある

マクロ経済スライドは、賃金や物価による改定から一定の調整を差し引く仕組みです。2026年度の基礎年金でいえば、前の項目の−0.2%がこれに当たります。

この調整には、年金の名目額が前年度を下回らない措置があります。調整しきれなかった分は、翌年度以降に繰り越されます(キャリーオーバー)。

名目額は、実際に受け取る額面のことです。この措置があるからといって、物価を考えた実質的な水準まで保たれるわけではありません。見通しの数字を読むときは、額面と実質額を分けて考えると整理しやすくなります。

出典:厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方 第4」 https://www.mhlw.go.jp/stf/nenkin_shikumi_04.html

氷河期・若い世代は?自分の額はどこで確認?

2025/6/13(金)成立の改正法に「底上げ」の規定

年金制度改正法(令和7年法律第74号)は、2025/5/16(金)に国会へ提出され、衆議院での修正を経て2025/6/13(金)に成立しました。この修正で、基礎年金の給付水準の底上げに関する規定が加わっています。

内容は、次の財政検証(2029年の予定)で基礎年金の給付水準の低下が見込まれる場合に、基礎年金と厚生年金のマクロ経済スライドを同時に終了させるための法制上の措置を講じるというものです。合計額が下がる人には、影響を緩和する措置も設けるとされています。

出典:厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html

出典:厚生労働省「将来の基礎年金の給付水準の底上げについて」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00023.html

実施するかは2029年の財政検証を踏まえて判断

底上げを実施するかどうかは、2029年の財政検証を踏まえて判断します。11/1(日)時点で、実施も実施時期も決まっていません。「底上げが決まった」「底上げは断念された」のどちらも、正確な表現とはいえません。

参考になるのが、2024/11/25(月)の年金部会に示された試算です。過去30年投影ケースで基礎年金の調整を早く終わらせ、調整期間を一致させた場合の数字は次のとおりです。

  • 現行のまま:2057年度に調整終了、所得代替率50.4%(比例24.9%・基礎25.5%)
  • 調整期間を一致させた場合:2036年度に調整終了、所得代替率56.2%(比例22.9%・基礎33.2%)

一方で、報酬比例部分の調整は、現行なら2026年度で終わる見込みのところ、一致させると2036年度まで続きます。これはあくまで試算で、実施が決まった内容ではありません。

なお、法律の概要によると、報酬比例部分のマクロ経済スライドは、配慮措置を講じた上で次期財政検証の翌年度まで継続するとされています。

出典:厚生労働省 社会保障審議会年金部会(2024/11/25(月))資料1 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001359218.pdf

出典:厚生労働省「年金制度改正法の概要」 https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001592624.pdf

氷河期・若い世代への影響(厚労省の説明と未決定の点)

厚労省の説明ページによると、令和6年財政検証を基に機械的に計算したモデル年金(1人分)では、底上げの措置で次のように見込まれています。

  • 62歳以下の男性、66歳以下の女性は、生涯に受け取る年金総額が増える見込み
  • 38歳以下は、一部の高所得者を除き99.9%の人が増える見込み

ただし、これは機械的に計算したモデルの話です。底上げを実施するかどうか、氷河期世代に具体的にいくら増えるかは、11/1(日)時点で決まっていません。そのため、この記事でも世代別の金額は示しません。

経済がどう推移するかによっても、状況は変わります。厚労省は、経済が好調なら基礎年金の給付水準は概ね維持され、好調でなければ調整が長引いて低下する見込みと説明しています。

自分の見込み額はシミュレーターとねんきんネットで確認

ここまでの数字はモデルの話なので、ご自身の見込み額は公式のツールで確認するのが確実です。

厚労省の「公的年金シミュレーター」は、IDやパスワードが不要です。ねんきん定期便の二次元コードで入力でき、個人情報は記録も保存もされません。簡易的な試算のため、実際の額とは一致しない場合があります。

より正確に確認したい場合は、日本年金機構の「ねんきんネット」を使います。日本年金機構のサイトから利用できます。モデル年金や満額の数字と、自分の見込み額は分けて考えると混乱しにくくなります。

出典:厚生労働省「公的年金シミュレーター」 https://www.mhlw.go.jp/stf/kouteki_nenkin_simulator.html

とれちゃん

法律に底上げの規定が入ったなら、実施も決まっているの?

とれくん

2026/11/1(日)時点で実施は未決定だよ。2029年の財政検証を踏まえて判断するんだ。

よくある質問

Q. 今もらっている年金も3割減るの?

A. そうした決定はありません。2026年度は引き上げられています。財政検証の表は新規に受け取り始める人のモデルで、既に受け取っている人の年金額は、毎年度、物価や賃金の変動に応じて改定されます。マクロ経済スライドの調整にも、名目額が前年度を下回らない措置があります。

Q. 2057年度に必ず3割減る?

A. 基礎年金の所得代替率が2057年度に約3割低下するというのは、4つの経済ケースのうち過去30年投影ケースの見通しです。必ずそうなると決まった数字ではありません。成長型経済移行・継続ケースでは、基礎年金の実質額(夫婦2人分)は13.4万円から13.6万円(2037年度)という見通しです。どのケースになるかは、この記事では予想しません。

Q. 底上げはいつ決まる?

A. 2029年の財政検証を踏まえて判断されます。11/1(日)時点では未決定です。

Q. 保険料は上がる?

A. 厚労省は、底上げの措置で保険料を引き上げることはないと説明しています。保険料は現在の水準(国民年金17,000円(2004年価値)、厚生年金18.3%)を維持するとされています。具体的な方法の1つとしては、厚生年金の積立金を活用する方法が検討されています。

Q. 自分の年金額を知るには?

A. 手軽に試算するなら公的年金シミュレーター、より正確に確認するならねんきんネットです。

最新情報の確認先

新しい決定や発表があるかどうかは、次の公式ページで確認できます。

この記事は、2027年度の年金額の改定、年金部会での底上げの議論、2029年の財政検証など、新しい公式発表があれば追記します(2026/11/1(日)時点の情報)。

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